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2005.05.28

ハイビジョンスペシャル(再) 『神の手をもつ絵師』 江戸の鬼才画家・若冲の不思議世界

若冲と言ったらコレかな。
gunkeizu ハイビジョン・チューナーを買ってからというもの、NHKさんの素晴らしい番組を見るのに、どれだけ時間を費やしていることやら。感動、感心するものばかりなので、正直このコーナーも毎日それらで書けてしまう。いやはや、ここ数日だけでも、小野田寛郎さんのドキュメントとか、KISSのライヴとか、工藤夕貴が案内役の「色」のやつとか、昨日おススメしたコンサートとか…。でも、それではちょっと芸がないので、いろいろ工夫をしなくてはなりません。でも、今日はこれを書かせていただきます。ものすごいインパクトでしたから。放送は木曜日でした。録画したものを見たわけです。
 若冲については、以前からけっこう気になっていたんですよね。こいつオタクだって。萌えちゃってるなって。すごいフェティシズムだなって(笑)。やっぱりそういう才能、そういう日本人的な感性は、外国でまず評価されるんですね。若冲に萌えちゃった若冲オタクは、アメリカの大金持ちジョー・プライスさん。この番組の見どころの半分は、このジョー・プライスさんです。
 でも、それは別に異常なことではありません。浮世絵と印象派の関係を思い浮かべればいいわけです。日本人の日本文化再評価というのは、いつもそういう迂回を必要としています。それだけ、日本の文化は意識化されていないわけです。これは強いですよ。しみついてるんですから。理論を必要としないんですから。
 さて、そんな日本文化の中でも、いたって変な若冲さんです。この番組によって初めて知ったことが多くありました。しかし、大方、私の予想通りだったとも言えます。彼の絵を語る時、「写実」という言葉が鍵になりますよね。実際クールベと結びつける方もおられる。この「写実」が難しいわけです。彼の絵はたしかに写実なのですが、それでいてリアルすぎる何かを持っている。よく言われる「生きているようだ」という感覚です。一方で、非常に緻密にデザインされた、あるいはデジタル化された部分も見て取れる。このバランスというか、ホンモノよりホンモノくさいうさん臭さというか、そう、ラ・トゥールでも感じられたアレですよ。
 そう考えると、まあ時代的には微妙にずれますが(ずれて当たり前ですが)、バロックですか。ただ、彼の仏教観というものを考えると、もっと広い視野、思想があるような気がします。人を描かず、人以外の生きものをひたすら描き続けた。一切衆生悉有仏性(人は除く?)を描いたのかもしれません。ジョー・プライスはそのあたりも理解しているのだろうか?いや、わかってそうだな。時間も金もあるオタクの研究心はすごいですから。そういえば、若冲もお金には困ってなかったんですよね。
 とにかく、一度生で見てみたい画家、若冲さん。そんな若冲さんを知るには、本当によくできた番組でした。2時間、視聴者を飽きさせない工夫もお見事。ちなみに3年くらい前のNHKのお仕事です。
 こういう視聴率を気にしない教養番組をたくさん見ることができるハイビジョンはいいですね。まあ、民放も含めてBSデジタルは渋めで好きです(どうでもいいお買い物番組もいっぱいですが)。ハイビジョンテレビが高いと思っている方、ぜひ私のようにチューナーを単体で買いましょう。録画などのことを考えても結局便利ですよ。

Amazon 目をみはる伊藤若冲の『動植綵絵』

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