『教育不信と教育依存の時代』 広田照幸 (紀伊国屋書店)
これは全国民必読の本でしょう。こういう本こそ売れてほしい。
先日、48歳の暴走族(暴走おじさん)が逮捕されましたね。これはこれで素晴らしい?ことです。誰もやらないことをやってのけるのですから。そう、こういうおじさんは珍しいのです。ほとんど皆無なのです。昔暴走族、今カリスマ予備校教師なんて方もいらっしゃいますが、そう、そこまで行かなくても、昔ゾクの頭、今バリバリの社会人とか、バリバリのいい父親とか、そういう方々の方が圧倒的に多い。
学校という現場からの報告をさせていただきますと、学生時代、問題児だったヤツらの方が、社会で活躍する確率が高い。そして、それと同じくらいの確率で、優等生はフツーになる。これは現場で学んだ「真実」です。
著者である東大の広田さんは、そのことをよくご存知であられる。今どきの若者は歴史的に見ても、いたって品行方正であり、ちっともおかしくない。そうした、教育や若者の荒廃は、マスコミを中心とした言説の作りだすところのものである。また、教育を批判するのは、教育が万能であるという幻想を持ち、またその幻への依存が強いヤカラである。そういうことを、おっしゃっております(もっと上品な言葉でですが)。
全くもってその通りだと思います。特に、マスコミや識者によって作られる幻影(悪しき物語だあ!)に関するところは、ワタクシも繰り返し申し上げてきました。
そういえば、「集団気分」という言葉でも書きましたねえ。広田さんが心配しているのは、私の言う集団気分です。集団気分の特徴はマイナス指向にあります。みんなで心配して安心する。それが実際に世の中をそういう方向に動かす。悪しき言霊。
今日、時事放談を見ていましたら、塩ジイと堺屋さんが「政治家は悲観的なことばかり言うのが仕事」みたいなことをおっしゃっていました。たしかに政治では最悪のケースを想定しなくてはいけない。で、今までのそういった予測はみなはずれてきた。政策も杞憂に終わった。政治の世界では、それでいいでしょう。
しかし、マスコミや識者までもが、そういうベクトルばかりものを言う(物語る)のは、正直どうなんでしょう。私はいけないと思いますよ。特に教育に関しては。教育というものは、たしかに大切であり、他人事ではないものです。しかし一方で、極端に他人のせいにしがちな分野です。答えがない世界ですから、逆にどんなニセの答えも作れる。
子供たちのことを、もっともっと、前向きに、楽天的に、しかし謙虚に、親も先生もマスコミもとらえられないのだろうか。私も現場にいて、また、自分の子どもを見ていて、そんなことを感じてきました。しかし、なかなかうまく言葉にすることができずにいました。広田さんのこの本は、そうした私のモヤモヤを吹き飛ばしてくれたのです。教育学者としては希有な存在です。素晴らしい。
最後に、現場で私が学んだ(学んでいる)究極の事実を書いておきましょう。私は出発点をここに置いています。そこから何ができるかです。
「親はなくとも子は育つ。先生なくとも生徒は育つ」
Amazon 教育不信と教育依存の時代
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