森洋子さん、久保田潤子さんコンサート&ETV特集「ヨーヨー・マとシルクロード・アンサンブルの仲間たち」
今日は、日頃お世話になっている森洋子さんのお宅で開かれたコンサートに行ってきました。森さんのチェンバロと久保田潤子さんの歌とハープによるイタリアものです。
イタリアバロックは、ある意味最もバロックバロックしていますから、私たち日本人としては、かなり思い切ったことをしなければならないと思います。ある時は清澄に、ある時はドロドロと、とにかく日本人にはちょっとオーバーアクションと感じられる位、突き抜けた演奏をしなけれはなりません。特に、今日のライヴのテーマは「愛の神のいたずら」ですから。これは躊躇していてはいられませんね。
と言うわけで、今日のライヴは、その点とても充実したムードを醸していたと思います。小さな会場で、まさに演奏者の息のかかるような空間であったのも幸いしたのでしょう。バロック本来の劇的な空気が生み出され、魅惑的な時間に満ちていました。適度な即興性も功を奏して、まさにライヴな、生き生きとした音楽が立ち現れていました。
とは言え、実は私は子守りのため、隣の隣の部屋で聴いていたのですが。それでも、今言ったような雰囲気は手に取るようにわかりました。廊下を通じて、音と空気は充分その部屋にも伝わってきていましたし。子どもが眠っていたので、その部屋の灯を消していたのですが、窓から見える星々を眺めながら聴く、遠い異国のいにしえの音楽も、また一興。こういう経験はそうそうないでしょうから、ちょっと得したような気もしました。ハイ。
さて、そんなふうに音楽の不思議、歴史の不思議、民族や言語の不思議などをぼんやりと考えながら家に帰りましたところ、ちょうどNHK教育でヨーヨー・マのドキュメンタリーをやっておりました。それが実にタイムリーな内容でして、西と東の音楽を結びつけようとするヨーヨー・マの崇高なまでの度量の大きさと、彼をとりまくアジアの名手たちの重い言葉に、深く感じ入ってしまいました。
誰が何と言ったかは詳細には覚えていませんが、心に残ったところを無理やり括ると、「音楽に東も西もない。音楽は世界の共通語である。いろいろな角度からものを見るという寛大さを持つべきである。音楽(特に即興)を奏でている時、自分の意識がどこにあるのか分からなくなる。それが生きていることを実感する最高の瞬間である。芸術に接する時、人は大地から生まれたことを知り、そのことにより善良になることができる。その手助けをするのが音楽家の役目だ…」こんなところでしょうか。
全くその通りであり、我々人間が勝手に考えている、国境や時代や常識や宗教や、その他もろもろのものが、実は自分たちの視野を狭め、人間本来の創造性を失う原因にすらなっている…。そうすると、今日のコンサートで、現代日本人である森さんが、日本の着物を着て、17世紀のイタリアの音楽を奏でたことも、全く不自然なことではなく、そうした、それこそ「縁」によって、私たちも、また音楽自身もより深く大きくなっていくのではないでしょうか。その方が本来であり、その本来を受け入れるマのような心の広さこそ、これからの地球人に必要なことではないでしょうか。そんなことを考えました。
本当にありがたいコンサートであり、テレビ番組でありました。
| 固定リンク
「音楽」カテゴリの記事
- ラモー 『優雅なインドの国々より未開人の踊り』(2024.08.12)
- ロベルタ・マメーリ『ラウンドМ〜モンテヴェルディ・ミーツ・ジャズ』(2024.07.23)
- まなびの杜(富士河口湖町)(2024.07.21)
- リンダ・キャリエール 『リンダ・キャリエール』(2024.07.20)
- グラウプナーのシャコンヌニ長調(2024.07.19)
「文化・芸術」カテゴリの記事
- いかりや長介と立川談志の対話(2024.08.19)
- 九州人による爆笑九州談義(筑紫哲也、タモリ、武田鉄矢)(2024.08.18)
- 全日本プロレス祭 アリーナ立川立飛大会(2024.08.17)
- 『もしも徳川家康が総理大臣になったら』 武内英樹 監督作品(2024.08.16)
- ラモー 『優雅なインドの国々より未開人の踊り』(2024.08.12)
「旅行・地域」カテゴリの記事
- 九州人による爆笑九州談義(筑紫哲也、タモリ、武田鉄矢)(2024.08.18)
- 『もしも徳川家康が総理大臣になったら』 武内英樹 監督作品(2024.08.16)
- ラモー 『優雅なインドの国々より未開人の踊り』(2024.08.12)
- 『大鹿村騒動記』 阪本順治 監督作品(2024.08.11)
- 富士山と八ヶ岳のケンカ(2024.08.10)
コメント
記事ありがとうございます。灯りを消した暗い部屋で星を見ながらお聴きいただいたとは、確かになかなかない聴き方ですね。私もそういう経験をしてみたくなりました。
さて、着物の件はそう大層なコンセプトは皆無でして(汗)、まる作さんで最近作っていただいたので、そのお披露目だったのでした。あいにく連休中でお店の関係者の方々には、いらしていただけなかったのですが。
昨年の三味線おさらい会以来、着物は腰が決まって重心が定まるので、楽器演奏には良いのではないか、それにやはり日本人はドレスじゃないよなあ、という境地なので、今後も着たいと思っています。でも、一人じゃ着れないのが難ですね。
投稿: よこよこ | 2005.05.09 22:28
おはようございます。いつもお世話になってます。
先日は素敵なコンサートをありがとうざいました。
イタリアバロックということでしたが何ともエキゾチックな気分に浸ってしまいました。
後でお聞きしたところ演奏されたハープは、元をたどればペルシャ発祥の楽器だとか。
オリエンタルな音に聞こえたのはそのせいでしょうか。
ハープの弾き語り、お着物姿の森さんのチェンバロと相まってとても不思議な雰囲気を醸し出してました。
そんな演奏を、すぐ間近で、絨毯(ON ホットカーペット)に思いっきりくつろいだ恰好で聴かせていただきました、幸せなひとときでした。
ところで着物はいいですよね!
投稿: ようこ | 2005.05.10 05:19
我らの民謡クラブも今度は是非和装でいたしましょう。ようこさんもきっとお着物お似合いだと踏んでます。
夏はゆかた、冬は綿入れなど、そう気取らず、ゆる〜く楽しみたいですね。
投稿: よこよこ | 2005.05.10 18:52