「大村はま〜わくわく授業 わたしの教え方」(NHK教育)
恩師大村はま先生がお亡くなりになってから、もう3週間近くたってしまいました。ようやく私の心も落ち着いてきました。その間、いろいろと考えることもありました。そうして思いをはせるたびに、背筋のピンと伸びるような感覚がよみがえります。大村先生の授業を受けたり、また、休み時間にお話しをしたりする自分は、たしかに普段と違った自分になっていたと思います。師とはそういうものなのだと、改めて感じているところです。
ラ・トゥール展を観に行った日の朝、この番組が放送されていました。私はその時も見たのですが、もうただただ涙が流れるばかりで、その気持ちを表現する言葉が全く出てきませんでした。だから、ここにも書けなかったのです。
昨日の深夜、その再放送がありました。今日の朝、それを見て、再び涙を流しました。私などにいったい何ができるだろうか。でも、なんとかして恩に報いたい。私は私なりのやり方で、大村先生の教えの、そのほんの一部でも伝えていきたい。そんなことが心に浮かんだ時、大村先生が、あの優しい指で、私の背中を押してくれたような気がしました。
今日は、番組で紹介されていた先生の最後の詩を、ここに記しておきたいと思います。私からは何も言うことはありません。
優劣のかなたに 大村はま
優か劣か
そんなことが話題になる、
そんなすきまのない
つきつめた姿。
持てるものを
持たせられたものを
出し切り、
生かし切っている
そんな姿こそ。
優か劣か、
自分はいわゆるできる子なのか
できない子なのか、
そんなことを
教師も子どもも
しばし忘れて、
学びひたり
教えひたっている、
そんな世界を
見つめてきた。
学びひたり
教えひたる、
それは優劣のかなた。
ほんとうに持っているもの
授かっているものを出し切って、
打ち込んで学ぶ。
優劣を論じあい
気にしあう世界ではない、
優劣を忘れて
ひたすらな心でひたすらに励む。
今はできるできないを
気にしすぎて、
持っているものが
出し切れていないのではないか。
授かっているものが
生かし切れていないのではないか。
成績をつけなければ、
合格者をきめなければ、
それはそうだとしても、
それだけの世界。
教師も子どもも
優劣のなかで
あえいでいる。
学びひたり
教えひたろう
優劣のかなたで。
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コメント
前略 薀恥庵御亭主 様
素晴らしい先生との出会いが
素晴らしい先生を生み出す。
有り難いことですね。
合唱おじさん 頓首百拝
投稿: 合唱おじさん | 2009.03.03 13:50
合唱おじさん様、おはようございます。
大村はま先生は、本当の神でした。
とてもまねできません。
実際、大村先生は、私のまねをするなら完璧にまねてください、とおっしゃってました。
結局それは無理ですから、あなたはあなたのやり方でやりなさい、ということだったのだと思います。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2009.03.04 07:56
大村はま先生に関するブログを読んで、お知らせします。
私は小学館の編集者ですが、8月2日、『評伝大村はま ことばを育て 人を育て』を小社より刊行します。著者は、教え子であり、『教えることの復権』の著者でもある苅谷夏子さん。本文576ページ、定価3360円という大部な本ですが、苅谷さんの骨太な筆力は、それを一気に読ませてくれます。
大村先生のご両親のおいたちから語りおこし、少女時代の作文などの第一次資料も駆使、その人間性形成の道をたどります。そして教師としてのすばらしい実績の蔭で味わったイバラ。ぜひお読みいただきたく思います。
投稿: 箕形洋子 | 2010.07.30 19:32
箕形さん、コメントありがとうございました。
私も教え子の一人として、また、恐れ多くも国語教師をしているものとして、ぜひ拝読させていただきたく思います。
さっそく注文させていただきます。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2010.08.02 19:17