『J-POP進化論 「ヨサホイ節」から「Automatic」へ』 佐藤良明 (平凡社新書)
この本も以前読んだものです。久々に出してきました。1999年に発行されてますから、もう6年近くたってるんですね。宇多田ヒカル降臨の衝撃が冷めやらぬ頃に書かれています。
当時もかなり面白く読んだ記憶があります。ある意味、当たり前の流れの解説なんですが、やっぱり権威でしょうか、東大の先生がこういう分野について語ると説得力がある。実際よく勉強されてます。
先生は、近代日本音楽の流れを「和」と「洋」と「黒」のせめぎあいとして捉えています。まあ「黄」と「白」と「黒」でもいいんでしょうけど、いやよくないか、とにかくその押し合いへし合いを、多くの楽曲(楽譜)をサンプリングして見せてくれます。
やや、音楽的な知識を必要としますが(そりゃそうか、学問してるんで)、全体としては平易な語り口で理解しやすい内容となっています。ただ、私の知らないサンプル曲もけっこうあり、楽譜を提示されても頭の中で鳴り響かないことが残念でした。これこそCD付きで発売してほしかった。そうすれば、本当に多くの日本人に、教養としてのJ-POPという存在を認識してもらえたのでは。
結局、音楽も、日本文化のご多分にもれず、外来のものを柔軟に取り入れ、それを独自の感性で消化していって自らの血や肉にしてしまった、ということですね。日本語が漢語や西洋語を取り込んで、しかし自然であるように。まあ、言葉と同様、旧世代は最新バージョンについていけなかったりしますけど。
いつも思うのですが、西洋人がJ-POPを聞くと、どんなふうに聞こえるんでしょうね。やはりエキゾチックなんでしょうか。魅力的に聞こえるんでしょうか。それとも笑っちゃうレベルなんでしょうか。歌謡曲全盛時代から、コードは西洋風だけれども音階は和風というヤツがたくさんありますよね。最近でも、ヒット・メイキングの定石の一つとなっているようです。それが、純西洋人にはどのように響くのか。気になります。
「スキヤキ」はなぜアメリカでナンバー・ワンになったのか。しかし「スキヤキ」はなぜオンリーワンなのか。二番煎じや二匹目のどぜうがなぜ存在しないのか。私はちょっと不思議なんですよ。
日本におけるJ-POPはわかります。では、世界におけるJ-POPはどうなのか、そこを考えていく時代でしょう。美術や文学やアニメはそれなりの位置を築いていると思います。音楽はどうでしょう。残念ながら…。
ところで、この本が書かれてからの、その後6年間、J-POP進化論は現在進行形なのでしょうか。私には歩みを止めているようにしか思えません。閉塞感すら感じます。メロディーを捨てて、それが「うた」なのでしょうか。カラオケで歌えない歌は「うた」なんでしょうか。ちょっとそんなことを考えてしまいました。この本でもすでにラップが語られています。みなさんはラップについてどうお考えですか。開音節の日本語はラップにならない(音符に乗れない)と思うんですけど…私は。せいぜい秋田音頭くらいでやめとけばよかったのに。
いや、世界的に見ても行き詰まり感はまぬかれません。そろそろ大天才が現れるような気も…。ぜひそうあってほしいと思います。
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コメント
スキヤキ…「上を向いて歩こう」、高校の音楽の教科書に出ています。全米1位になったことも書いてあります。それで、この曲、いわゆる調性音楽じゃないんですよね。つまり「旋法」、それもはっきりと日本の音楽なのです。「半音」の音程が中間部に経過的に2か所出てくるのみです。導音→主音に解決する構造ではないわけです。
私が思うには、やはりこれは西洋人の耳からするととっても新鮮だった。それと、アレンジは、60年代のちょっとオシャレな都会風=つまり、アメリカ風ですよね。それが、受け入れられたってことではないでしょうか。
そして、その後日本の歌が全米1位になることは一度もなく…昨年授業でこの曲を使って「半音」と「全音」を
勉強させたものの、思わぬ大きなテーマにぶつかった思いがしましたよ。
投稿: よこよこ | 2005.05.21 11:57
よこよこさん、コメントどうもです。
今や教科書にも載ってますか。
あの曲がヒットしたのは、エキゾチックな新鮮さがオシャレに響いたからですね。
でもその後続かなかったのは、スキヤキがずば抜けた名曲だからでしょうか。
中村八大がすごい曲を作ったということですね。
メロディーで勝負。すごいなあ。
そういう作曲家が現れないでしょうかね。
日本発の世界的なスタンダードナンバーが聴きたい!
そういえば「島唄」も「旋法」でちょっぴりグローバルになりましたね。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2005.05.21 14:47