『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』 押井守監督作品
雷に打たれてしまった。
この歳になるまで、こんな世界があるのを知らなかった…それを今とても幸運に思っています。
まずは、とにかく純粋に楽しみ、考えさせられ、感動し、とても興味をそそられました。
もう充分に語り尽くされているので、軽々と分析するような作品ではないと思いますが、また得意の特異な視点からの感想でも書かせていただきましょうか。
夢をテーマにしたすぐれた作品というのは、大昔からずいぶんとたくさんありますよね。ここでおススメしたものとしては、これらなんかが新しめの傑作です。夢を扱うとなぜ名作が生まれるのか。
夢については私もずいぶんと考えてきました。押井さんの語ったことは、結局人間なら誰しも一度は考えたことがあるでしょう。しかし、ここで大切なのは、その「語る」という行為です。
何度か少しずつ書いていますけれど、私は今、新しい「物語論」を構築中です。少しネタばらししますと、無常であり、消えゆくものが日本語の「もの」であると定義し、それを固定し、それに永続性を与える人間の行為を「かたる」と考えます。つまり「物語」です。そして、結果としてできあがった事象が「こと」です。
「もの」の代表的なものは、人間の頭の中にある世界です。例えば記憶や夢、イメージや妄想…。それらがなるべく消えゆかないように、例えば私たちは「ことのは」というメディアを使ってきました。また、絵画や音楽、舞踏がメディアになることもあります。そして、現代では、総合的な映像作品が「語る」際の重要なメディアになっています。
特にアニメーションの本質は、まさに無機な「もの」に生命(アニマ)を与え、有機的な「こと」として、世界に刻印することであると考えます。つまり、とってもシンプルに言えば、「夢」を「現実」にすることなのです。
そういう現場で生じるのは、永遠性を獲得した歓びと、そしてその反面にある永遠性の哀しみではないでしょうか。変化しないことの美しさと醜さ。人間というのは勝手なもので、永遠性を本能的に求めつつ、いざそれを手に入れると、今度はそこに不満や不安を抱く。そうした自家撞着を、「うる星やつら」という素材と、「アニメーション」という技法によって、逆説的に描いたのが、この作品なのではないでしょうか。
「もの」を支配する時間や空間から自由になり、「こと」が繰り返されていく。しかし結局はそこに安住したいとは思う人間はいない(宇宙人もかな)。だから、人は映画館で映画を観たりして、でも時間が来ると扉を開けてこちらの世界に戻ってくる。そんな人間の営為と、「もの」への愛着と、「こと」への憧れとが、見事に描かれていたと感じました。
コメンタリーを聞いてみると、押井さんやスタッフのみなさんは、そんなことを考えないで制作していたようですけれど、それはそれで当然です。押井さんはやりたいことをやっただけ。スタッフはしめきりに追われて仕事をやっつけただけかもしれません。しかし、そんなある意味自然な行為に、人間と世界の本質が宿っている。
ただ、押井さんのやりたいことのレベルと、スタッフのやる気(エネルギー)のレベルが、我々凡人のそれよりも高かった。また、原作者は不満だったかもしれませんが、やはりアニマを与えられたキャラクターたちのレベルが高かった。そういうことではないでしょうか。
思わず生徒に見せてしまいました。そして、「中間テストはこれ!」と言ってしまいました。いや、ホントへたな小説読むよりずっと勉強になりますよ。あまりに本質的です。自分の命(人生)にかかわる問題ですから。
これを観ると「イノセンス」も同じテーマを扱っているのだと理解できます。今日は偶然、同僚から大量の「攻殻機動隊」「パトレイバー」関係資料を借り受けました。時間をかけてゆっくり観ていきたいと思います。いやあ、ホントすごい作家さんですわ。
追伸 他にもいろいろ言いたいところですけど、最後に一言だけ。コメンタリーでこれについてのエピソードが聞けたのが違った意味で収穫でした。ああ、楽しかった。あと、生徒が「あり・をり・はべり・いまそかり」で笑ってくれてちと安心。
Amazon うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー
その他のうる星ネタはこちらでお読み下さい。
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コメント
TBさせて頂いたsyosei7602です。
コメントを書込んで頂いてありがとうございました。
押井守監督という人は、様々な作品で「夢」を扱っています。
いわば小説上で語られるような「映像化ができないような」映像を作っちゃうんですね。
この「うる星やつら」、そして「攻殻機動隊」「イノセンス」、実写作品なら「紅い眼鏡」「アヴァロン」なんかもそうです。
興味が沸きましたら、是非見てみて下さい。
投稿: syosei7602 | 2005.08.09 00:55
syosei7602 さん、TB&コメントありがとうございました。
そうですね。私まだイノセンスしか観ておりませんが、ぜひとも実写もふくめていろいろと鑑賞してみたいところです。
映像化できない映像を作る、なるほどそこが押井さんのすごさですね。
観ましたら、ここでまた報告します。
では、今後ともいろいろとご教示ください。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2005.08.09 13:03