『新版 色の手帖―色見本と文献例でつづる色名ガイド』 永田泰弘 (小学館)
昨日、日本の色についてちょっと書きました。その流れで、取り出してきたのがこの本。先日、父が置いていってくれたものです。
この本はいいですよ。一家に一冊常備したいですねえ。眺めて楽しい。読んでためになる。へたな小説なんかを読むより、ずっと癒されますし、勉強になります。
この本には、500種類の色名とその色見本、そして簡潔にして十分な解説が載っています。
昨日の記事流に言えば、お天道さまの光を500に分解しているわけでして、こうしてその豊富さに接すると、人間の素晴らしさに対して、また、全てを包含するお天道さまと、それぞれの個性でその光を反射する万物に対して、驚嘆と畏敬の念を持たずにいられません。
それから、ものすごく単純に、色の名前が美しい。和名については言うまでもありませんが、不思議なもので、外来の色の名前もとってもきれいなんです。詳しくは本書をどうぞ。
ぱらっぱらっとページを繰っていると、意外な気持ちにもなります。えっ?この色ってこんな色だったのか、間違ってた…というふうに。単に私の知識があいまいなだけかもしれませんが、例えば次のような色。ちょっと想像してみて下さい。
海老色(えびいろ) 臙脂(えんじ) 駱駝色(らくだいろ) 亜麻色(あまいろ) 黄土色(おうどいろ) 青丹(あおに) 鉄色(てついろ) 瑠璃色(るりいろ)
どうでしょう。正解は…やはりこの本を見て下さい。立ち読みでも結構です。高い本ですからね。
この手の本は他にもありますが、西洋の色名も含まれている点、また、文学における使用例が豊富な点、そして、実用的にCMYK値とマンセル値が付記されている点において、この本は決定版と言って良いのではないでしょうか。
また、手軽な現実逃避の道具としても、実にうまく機能しますよ。不思議と視覚以外の感覚が鈍るんですよね、じ〜っと見入っていると。まあ、色彩を感知できない動物が多いことを考えれば、とてもぜいたくな逃避方法なんでしょうが。
Amazon 新版 色の手帖
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コメント
私も持ってます。色の手帖(旧版1988年の第12刷)。
普段忘れてますが、たまに手に取っております。
昨年から着物を着るようになり、日本の色に興味が湧いています。
風景と日本の色ということでしたら、写真集がありますよ。
ちょっとタイトルを失念。まだ買ってはいないので。
多分ご存知と思いますが、今度確認してまた。
投稿: よこよこ | 2005.04.18 23:23
よこよこさん、おはようございます。
今、我らが住む富士北麓は見事な色々の饗宴状態ですねえ。
人間の方も宴を…。
やっぱりいいでしょ。ここは。
よこよこさんのお宅のあたりは一等地ですよ。
写真集については、たぶん知りません。
情報よろしくお願いします。
といっても、写真で見るまでもなく、目の前にありますけどね。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2005.04.19 08:06
私も同じものではありませんが、DIC の色見本帳(和名)をもっています。これは短冊状になっており、それぞれにミシン目が 12mm 幅くらいに何本も切られております。印刷屋さんへ色指定する時、それをちぎって原稿に貼り付けるためです。その短冊を扇子のように開いた時のグラデーションの美しいこと。それを眺めながらロマンチックな和名に想いをはせると、ちょっとしたエクスタシーを感じたものです。(あ、私は十分にフェチですね。)
投稿: LUKE | 2005.04.19 17:37
LUKEさん、
なるほど、短冊を扇子のように開いた時のグラデーションですかあ。
いいですねえ。たぶん、私もウットリしちゃいますよ。
私の紹介した本では、それは叶いませんからね。
ちょっとうらやましいです。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2005.04.19 19:36
色といえば、カステル神父の「色彩クラヴサン」というものが何なのか気になっています。ボードレールの「照応」の詩のような五感がこたえあうようなものに興味があります。
投稿: 龍川順 | 2005.04.20 00:22
龍川さん、おひさしぶりです。
カステル神父の「色彩のクラヴサン」については、全く知りません。
ラモーの時代の人ですよね。カステルさん。
ぜひ、くわしく教えて下さい。
ボードレールについても全然詳しくありませんが、
彼の「照応」というのは、言葉をメディアにした五感の統合、というようなイメージを持っています。
そういう意味では、言葉を自然と同レベルに持ち上げ(ようとし)た天才と言えるのでしょうね。
それはものすごい苦行だったと思いますが。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2005.04.20 08:59