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2005.04.12

トン・コープマン 『2声のインヴェンションと3声のシンフォニア』(バッハ)

00011 今日、仕事中にiMacG5くんが故障しました。ぎりぎりで書類のバックアップは取りましたが、あれはどうもハードディスクの不具合のようですから、ちょっと厳しい状況ですなあ。orz…。明日アップルに電話してみますわ。
 で、久々にPismoくんからの書き込みです。ホントは一冊本を読み切って、それについて書こうかと思っていたのですが、仕事が忙しい上に予想外のことに時間を取られてしまいましたから、ちょいとごまかそうかと考えました。それで、ちょこっと聴けるCDを、と思って適当に引っ張り出して来ました。
 しかし、ちょこっと、と思っていたのが大間違い。なんか、いろいろ考えさせられてしまいましたなあ。
 コープマンの演奏は一言、素晴らしい。コープマンにしてはおとなしい演奏だと思います。彼らしい、アーティキュレーション、装飾、テンポの揺れなどは聞きとれますが、その程度はいつもより小さい。コープマンの、この曲に対する思いが伝わってきます。そういう曲なんですよね。
 あまりにも有名なバッハの「2声のインヴェンションと3声のシンフォニア」。どういうわけか、子どもがこの曲を弾いているのを見かけます(聞くにたえない)。逆にプロの方で、この曲を積極的に弾く方をあまり知りません。なぜか。今日は、そこを仏教的見地から分析してみましょう(笑)。
 楽器を演奏する方なら、声部数が少ない曲ほど難しい、ということを体験的にご存知でしょう。不思議ですよね、技術的にはそれこそ子どもレベルなんですがね。
 音楽を作るのが難しい…本当にそうなんでしょうか。私は、今日この曲たちを聴きながら、こんなことを考えました。
 例えば、2声のインヴェンション。ある一つの音は、それだけでは意味を持ちません。絶対的な存在とは言えない。しかし、他の音との関係性が生まれると、突如動かしがたい意味を持って立ち現れます。他の音というのは、一つには、その声部の中での、その音の前後の音たち。つまり横の流れ、時間の流れにおける関係性。そして、二つ目は、もう一つの声部の音との関係性。縦の関係性です。こちらはほぼ共時的。
 こうした関係性が、その音を意味のある音たらしめているわけでして、これはまさに、仏教で言う、「空」「無我」「不二」「縁」の思想に通ずるものがあります。
 その関係性ですが、関係を持つ最小単位は「2」です。最大は無限大でしょうか。宇宙はほぼ無限の関係性によって存在しています。地球に絞ってみたり、さらに自分の存在に絞ってみても、かなり多数の「縁」が存在していることが想像できます。
 「縁」が多いということは、現象としては大変複雑になるわけでして、しかし一方では複雑だからこそ、「あそび」も生まれます。お互いがクッションになって、誤差を吸収していくのです。逆に、関係が少なければ少ないほど、そうしたあそびはなくなっていきます。どんどん、純粋な絶対性が強くなってくるわけです。そういう中に、自分が入り込んで、新しい縁を作ることが、とても難しいのです。
 特にバッハはそういう音と音との関係性(縁)を、ほぼ完璧に操ることの出来る天才でしたから、私たち凡人がそこに加担するというのは、とても勇気のいる難しいことなのです。
 それができるのは、それなりの大人か子どもだけでしょうね。
 なんて、どうでもいいこと考えちゃいました。あんまり真に受けないで下さいね。

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コメント

 2声のインヴェンションから仏教の「縁」の展開、さすがです!
曲作るのも演奏するのも声部が少ないほど難しい。
もう「必然」の世界ですからね。
バッハの”宇宙感覚”というか、世界観というのはプロテスタントの信仰というよりは、数秘術に凝っていたりしたことからもわかるように、かなり神秘主義なのですよね。
宗教というより「本質」だとか、もっと大きな枠で物事を考えていた人だと思います。

投稿: 洋琴庭(よこよこ) | 2005.04.13 22:01

コメントありがとうございます。
プロの方から、そのようなお言葉をいただけますとは。
ありがたいことです。

バッハって、ちょっと不思議な趣味がありますよね。
制約を好むというか。無伴奏なんてかなりおかしいですよ。
おかしいけど、動かし難い名作なんですよね。

本質へのアプローチが、なんかオタクっぽいような…。
まあ、細部に入り込んでいくと、そこに宇宙が開けているんでしょう。

投稿: 蘊恥庵庵主 | 2005.04.14 08:50

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