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2005.03.12

シド・バレット 『帽子が笑う…不気味に』

Syd Barrett 『The Madcap Laughs』
B000024KBA.01.MZZZZZZZ 今日は友人宅にお呼ばれ。素敵なディナーをいただきながら、芸術談義などを楽しみました。ごちそうさまでした。
 さて、そこの奥様のおススメがこれ。シド・バレットのソロアルバムです。う〜ん濃いですなあ。シドと言えば、ピンク・フロイドの初代メンバーというか初代ピンク・フロイドそのものである、という認識はありましたが、ソロは聴いたことがありませんでした。というわけで、私は初体験です(もちろんカミさんも)。
 いやあ、かなりぶっとびましたね。ピンク・フロイドとは全く違う印象を持ちました。もちろんその実験性というか、革新性はプログレッシヴと言えるのでしょうが、なんというか、フロイドよりもかなり生々しい人間を感じさせるものでしたね。 
 そうそうたる共演者が名を連ねていましたが、出てくる音は全編シド以外の誰でもないという感じ。ほとんどフォーク・ギターとシドのボーカルしか耳に残りません。それもザクザクと切り刻むような音。そして言葉…いや実際のところ、私は英語がほとんど分かりませんし、だいぶ酔っぱらっていたので、なんとなくイメージでしかないんですが、とにかくすごそうです。アルバムタイトルや曲のタイトルだけ見ても、充分その卓越したセンスを感じますよ。
 そういうセンスをサイケだとか言ってくくってしまうのは簡単です。ドラッグの産物だと言うのもありだとは思いますが、そういう先入観を捨てて向かい合ってみれば、やはりそこにあるのは命を削った末に出てくる言葉や音楽なのです。実際、シドはその後数枚のレコードを作って死にます。ミュージシャンとして表現者としては死んでしまうわけです。
 ある意味、ピンク・フロイドという商品から追い出されて、初めて本来の自分の魂を表出できたのでしょう。そして、もぬけのからになった。彼の芸術家としての才能とエネルギーはそこまでだったのかもしれません。
 このアルバムを聴きながらいろいろとお話しましたが、やはり、芸術家というのは個人的な「狂気」に商品としての「社会性」を与えられなければ、時代に生きていくことができないんですね。ただ、それはほとんど不可能なことであり、結局「時代」を取るか、「歴史」を取るかということになってしまう。「時代」の寵児になる道を選べば、本来の自分を殺しながらも生き続けることができる。「歴史」に名を残す道を選べば、人間としての自分は死んでしまっても、魂は生かし続けることができるわけです。この選択は本当に難しいですね。もちろん、そんな選択すら許されないフツウの人がほとんどなわけですが…。

Amazon The Madcap Laughs [Bonus Tracks #1]

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