『異文化理解』『他文化世界』 青木保 (岩波新書)
私の最近の、いえ、一生のテーマは「みんな仲良く」です。単に争いごとが嫌いなので。世界が「まあ、いいじゃない」的に丸くおさまればいいなあ、なんて、そんな程度のテーマです。
その実現の障壁となるのが「言葉」です。それは言語という意味でもあり、宗教という意味でもあり、もっと広く文化という意味でもあります。私もお世話になり、正直大好きな「言葉」なのですが、そいつを死ぬまでにやっつけたい、やっつけないまでも、反省させたい、ギャフンと言わせたい。こんな屈折した目標を立てております。
さて、そんなわけで、いろいろと本を読んでいるわけですが、本なんてそれ自体が「言葉」の集積所みたいなものですからね、早速自家撞着に陥ってま〜す(と、笑っちゃわないとこの作業は続かない)。
今日読んだ二冊。タイトルがいいじゃないですか。まさに私のテーマにうってつけ。
読んでみますと、非常に簡明。中学生でも十分読みこなせます。実際、昨年のウチの入試問題に「異文化理解」を使わせていただきました。
この手の新書にしては珍しく、このブログのような「です・ます体」を使っています。私の場合は、たぶん下心あっての策だろうと思いますが、青木先生の場合は、単に読みやすく、いや、読んでもらいやすくするための自然な選択だったのでしょうね。
内容の方も、実に当たり前に終始していまして、ちょっと肩透かしをくらったような気がしてしまいます。しかし、こういったことを堂々とおっしゃるエライ学者さんがあんまりいないので、これはこれで大いに意味のあることだと思います。金八先生が熱く語っても、「ああ、また何か言ってらあ」程度にしか思いませんが、青木先生がこうして理想論を熱く語ってくれると、「やっぱりそうだよな」と思えるから不思議です。言葉にもいろいろある。
さて、ここで少し意地悪な私に登場願いましょう。いつものアマノジャク的批評をどうぞ。
まず「異文化理解」。「異文化」という言葉自体が「理解」を妨げていると思うのは私だけでしょうか。「異文化理解」と言ってしまえばカッコいいのですが、「理解」できないから「異文化」ではないのでしょうか。百歩譲って、その「異文化」という概念が存在するとして、「理解」しなくてはいけないものなのでしょうか。「理解」しようとすると、「理解」できないことに気づいて、やっぱり許せん、ということになりますよ。「理解」ではなく「まあ、いいじゃない」だと思うんですが。
次、「他文化社会」。これは当たり前すぎですね。人間に言われなくとも自然界は多様です。言葉にするから意識されて問題化するのです。これも「他文化」で「まあ、いいじゃない」。
ごめんなさい。しかし、こういうような意識で読んでみることも大切ではないでしょうか。
筆者は、文化力をアップすべき、魅力として、ソフトパワーとして重視すべき、と述べています。確かにそうですが、文化には悪の側面も醜の側面もあります。残念なことに、この本には+の面ばかりを重視する危険性については書かれていませんでした。
Amazon 異文化理解 多文化世界
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