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2005.03.22

『新編 悪魔の辞典』 ビアス著 西川正身編訳 (岩波文庫)

4003231228.09.MZZZZZZZ 久しぶりに読んでみました。最近少しなまってるんで。
 こういう感覚を取り戻すためのバイブルですね、これは。つまり、毒舌を思い出すための気付け薬。
 知的なアマノジャクというのは、どの時代においてもcool!ですよね。常識や風習や教育や集団的自衛意識、そして単なる怠惰によって凝り固まった脳ミソに喝を入れる。閉じた片目を再び開かせる。ブラック・ユーモアは人生の必需品です。
 そんな風刺・毒舌の古典の一つが、この『悪魔の辞典』。今までに何度も読んでいます。比較的最近も筒井版を楽しみました。ただ、筒井さんによる名訳だと、なぜかブラックじゃなくなるんですよね。色が付く。ユーモアというのは加減が難しくて、よくやっちゃうのが、調子に乗りすぎというヤツ。筒井さんはちょっとそういう傾向がありますね。才能がありすぎると制御するのが大変でしょう。
 そんなわけで、制御の効いた、新・西川バージョンを読んでみました。
 このバージョンは抄訳です。どういう観点で抄出しているのか気になるところですが、ご本人によると、「編者の独断と僻見を尺度として然るべき見出し語を自由に選び出して訳出した」そうです。まあお気に入りだけ選んだベスト版みたいなものでしょう。
 それでもやっぱり気になるので、編者の僻見(独断は僻見の結果ですから尺度ではないでしょう)とは何なのか解読しようとしましたが、ちょっと無理でした…なんて悪魔に魅せられた編者の「言語」(われわれがそれを使って、他人の宝物の番をしている蛇たちをうまうまと手なずけてしまう音楽…byビアス)を真に受けてるようじゃ、私もまだまだですな。
 さてさて、そんな中で今回注目したのは「宗教」(「希望」と「恐怖」を両親とし、「無知」に対して「不可知なもの」の本質を説明してやる娘…byビアス)に関する記述です。
 その当時のアメリカのキリスト教事情は相当荒れていたようで、かなり厳しい語釈が並んでいます。ビアス自身は敬虔なカルヴィン派の家に生まれたそうですが、それにしては、いやそれだからでしょうか、容赦がありません。まあ、その辺は読んでいただくとして、そんな中で、どうとらえたら良いか、正直わからなかった語釈があります。それが、
「涅槃(nirvana)」
です。この語の登場自体、かなり唐突な感じがしますが、問題なのはその語釈。
「仏教において、賢人たち、とくにこの状態を理解できるほど賢明な人びとに授けられる、この上なく快い寂滅の状態を指して言う」
 これは何なんでしょうねえ。そのまんまのような気もしますが…。うがって考えれば、ツッコミどころはたくさんありますよ。「賢人」とか「授けられる」とか「この上なく快い」とか…。ビアスの場合、良く理解していることになればなるほど、そのまんま的表現をとって、あえて揶揄するようなところがあります。しかし、アジアの文化についての他の記述を見ると、ビアスがそれほど仏教の思想に明るかったとは思えません。だから、私自身も上手にツッコミを入れられないのです。う〜ん、これは謎です。まず原文に当ってみるべきですね。
 というわけで、他にもいろいろ気になるものがありました。実際あるのかないのか定かではありませんが、語釈のバックにある(はずの)コンテクストを想像するのも、また楽しいものです。
 な〜んて、また悪魔の思うツボですな。いえいえ、悪魔の口車に乗って(調子に乗って)、勝手に色を付けていくのが、この辞典の楽しみ方なのでしょう。そう私の中の悪魔がおっしゃっております。

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