『すぐわかる日本の仏教美術』 守屋正彦 (東京美術)
これまた、生徒の本を拝借して読んじゃいました。これはいい本です。
仏教美術をなぞりながら、結果として日本仏教史の流れと日本美術史の流れがつかめます。
最初から最後まで、徹底して「わかりやすさ」を追求していて、なんとも爽快です。爽快なんて変な表現ですが、解説書に対する私の最高の賛辞なのです。特に、日本仏教美術史という、一見小難しそうなトッツキにくいテーマを、こうして一流の学者さんが凡夫のために語ってくれるというのは、本当にありがたいことです。まさに和光同塵。
オールカラーの図版は、まあ当たり前です。何より、まさに知りたかったこと、今まで実はよくわかっていなかったこと、イメージ化しにくかったこと、それらを見事にまとめた図表の素晴らしいこと。私の頭でもしっかり理解できました。読みながら、眺めながら、何度ウンウンとうなずいたことか。きっと筑波大学の学生さんと、あ〜でもない、こ〜でもない、とやりながら完成させたんでしょうね。素晴らしい。
見開き2ページが一つのテーマになっているのですが、そのタイトルやサブタイトルも秀逸です。もちろん、本文も。さらに適度に配置されている「観賞のポイント」「ミニコラム」もいいですね。「ホストコンピュータ」「テーマパーク」「バーチャル・リアリティー」「バブル」「スーパーマン」「インドア」「アウトドア」「アニメ」…こういうカタカナ語が普通に出てきます。仏教美術の解説にですよ。しかし、それが実に自然なのです。決して凡夫にへつらうわけではなく、たしかにそれらの語がイメージにピッタリなわけです。それでこちらも、なるほどと「腑に落ちる」。
守屋先生は山梨のご出身。今は筑波大学で教鞭をとられています。そんなわけで、時々山梨にある仏像たちが登場します。これはちょっと嬉しい。山梨=甲斐の国は、本当に「なまよみ」です。特に仏教に関してはいまだに謎が多い。こんな流刑地になるような山奥に、いやそれだからこそでしょうか、各宗派において最重要と思われる寺院や、名僧の足跡が散見されます。この本を読んで、また甲斐の国寺社巡りをしたくなりました。相変わらず単純なオレ…。他の「すぐわかる」シリーズも読んでみようっと。そしてまた影響を受けたいものです。
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