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2005.02.21

『神話と日本人の心』 河合隼雄 (岩波書店)

4000233823.09.MZZZZZZZ 河合隼雄さんも、国語のテストによく出る作家さん、いやいや学者さんです。
 本職はユング心理学。しかし、なにしろ文化庁長官ですからね。日本文化に対する愛情は人一倍深いものがあります。やはり、ヨーロッパでユングを学んだ末の日本びいきですので、説得力があるんですね。単なる愛国者のそれとは違う文章です。
 この本は、おそらく河合さんの代表作となるでしょう。アイデンティティーを突き詰めようとすれば、自国の神話に行き着くことは当然のことです。しかし、それはいろいろな意味で困難なことでもあります。それを成し遂げた(まだまだ御本人にとっては道半ばかもしれませんが)爽快さのようなものが、この本にはあるのです。また同時に、ここに至るまでの苦難も読み取れます。だからでしょう、単に知識として勉強になった、というのとは違った感銘があります。事実の発見だけではない何かですね。そういう意味では、優れた小説の読後感に近いものを感じました。御自身もおっしゃっていますが、「命がけ」の語り。
 河合さんは、まず、日本神話に頻出する「トライアッド(三角関係)」の一つの頂点が、「無為」な存在であることに注目します。そして、その「無為」を中心とする日本的「中空均衡構造」と、一神教世界における「中心統合構造」を比較します。そして、大方の予想通り、前者こそ平和的文化的社会を可能にする思想・哲学・心理であると語ります。
 現代日本は言うまでもなく、後者を良しとする傾向を強めているわけですから、単に前者に帰れ、という結論に至るのかと言うと、決してそういうわけではありません。両者の併存を提案します。結果として、そういうところにこそ説得力が宿ります。河合さんの面目躍如。
 「無為」な神たち、それらが実は裏方として重要な働きをしている。こういう考え方は、例えば出口王仁三郎のような、新宗教の発想にもつながっていきます。河合さんは、トライアッドに入れなかった不具の子「ヒルコ」の再来に注目していますが、王仁三郎が「ヒルコ」について、言霊別命の分霊であるとした上で、「葦舟で流された後、常世の国と根の国で重要な働きをする。さらに、ユダヤの救世主となって十字架につけられ、贖罪主となった」としているのは、実に面白いですね。一見トンデモのようでありますが、興味深い示唆が含まれていると思います。
 いずれにせよ、河合さんのライフワークともなるべき力作でした。力作ですが、相変わらず読みやすく理解しやすい文章。私も最近、神話の世界に回帰しつつあるので、大いに参考になりました。
Amazon 神話と日本人の心

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