『銀河鉄道の夜 第3次稿〜』 宮沢賢治
昨日の夜、久しぶりに眠れなくなりました。鳥肌が立ち続けて眠れないのです。風邪気味だったからではありません。寒かったからでもありません。ついに出会ってしまった、という感覚のためです。
昨夜、夜中に目が覚めて、なんとなくある漫画を読み始めました。ますむらひろしによる「銀河鉄道の夜」です。原作はもちろん宮沢賢治。
少年時代、私は宮沢賢治に強い憧れを持っていました。文学、音楽、天文学、宗教…考えてみれば、今の私の基礎は、全て賢治から分けていただいたものです。それほど大きな存在でした。
しかし、青年になった私は、なぜか賢治を避けるようになりました。それがなぜかは、その時も今も、はっきりわかりません。ただ、ものすごく自分の中心に近い所の感覚が判断したことであるのは間違いありませんでした。急に怖くなったのです。それまで、何気なくイメージの羅列のように感じていた言葉さえも、何かものすごく重く深い意味を持っているようで、そして、その意味がわかってしまいそうで。
もう一度賢治の言葉に接してみよう、という気持ちがわいてきたのは、不惑を過ぎてからのことでした。しかし、直接本を開くことができない。まだ怖いのです。そこで、私はまず、子供たちに見せるという口実を作り、「銀河鉄道の夜」のDVDを買いました。ますむらひろし原画、別役実脚本、細野晴臣音楽による映画です。しかし、幸か不幸か、そこには怖さの原因が完全に欠落していました(詳しくは1月31日付けでおススメした「憎悪の宗教」を御覧下さい)。
そこで、次に入手したのが、より原作に忠実だと聞いたますむらひろしの漫画です。前半には一般に知られている賢治の最終稿が漫画化されていました。そこには映画でカットされた重要なシーンが描かれていました。「ほんとうの神様」についての議論の場面です。単純に、賢治の内部にあるキリスト教と仏教(法華経〜国柱会)との葛藤だろうと思われました。
そして、後半。いわゆる旧稿(第3次稿)の忠実な漫画化です。私は本当に戦慄しました。晩年、賢治自身が墨で塗りつぶした言葉たち。つまりブルカニロ博士の語ったこと。そのあまりに真相を突いた内容に愕然としました。いきなり、解答を突きつけられてしまった私は、もう鳥肌を立てるしかありません。
しかしそれは、解答でありながら、永遠の問題でもあり続けるのです。なにしろ、賢治自身がその解答を死の前に撤回しているのですから。そして、あの残酷な、しかし淡々としたエンディングを与えてしまったのですから。
私は今日の昼、初めて賢治による旧稿を読みました。もちろん、ますむらひろしの書いた通りでした。私は今一度恐怖、いや畏怖でしょうか、とにかくとんでもなく大きな予感を賢治の言葉に感じてしまいました。
これが何の始まりなのかはわかりません。しかし、再び開いてしまった本はもう閉じることができないという気がします。ものすごく怖く、楽しみです。博士の言葉は、賢治(ジョバンニ)にとって理想だったのか、現実だったのか。そして、保坂嘉内(カムパネルラ)にとっては…。また後日。
旧稿より「ジョバンニの切符(後)」を読む
Amazon 銀河鉄道の夜 扶桑社文庫
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