フォーレ『レクイエム』 ジョン・ラター指揮 ケンブリッジ・シンガーズ
世の中で最も美しい音楽は何?この質問に答えるのは誰にとっても難しいことでしょう。
私もいくつかの答えを用意できます。たぶん、その時々によって、どの答えを提示するか、判断するのでしょう。つまり、一つにしぼりきれないということです。当然ですよね。
この曲は、それらのリストに欠かすことはできません。同意してくれる方々も多いのでは。
私は、この曲に強い思い入れがあります。個人的な思い出になってしまうので、多くを語りませんが、本当に大切な人を送らなければならない日に、お寺で(!)ずっとこのレクイエムが流れていました。生前、その方もこの曲が大好きで、よくいろいろな演奏を一緒に聴き比べました。自分が死んだらこの曲をかけてくれ、と冗談交じりに言っていたのが、恐ろしいまでに早く実現してしまうという、本当に哀しいことになってしまったのでした。
その方が好きだったのは、たしかクリュイタンスの美しすぎるほど濃厚な演奏だったと記憶しています。私も高校時代にその演奏でこの曲を知りました。もちろん私も大好きです。
私が推したのが、ここで紹介するラター盤です。クリュイタンスとは本当に対照的なアプローチの演奏ではないでしょうか。使用している版は一般的な1900年版ではなく、1893年版です。オーケストレーションも小規模で地味。合唱もかなり小編成です。古楽器をやっている私としては、こちらの清澄な響きにより惹かれますね。心が洗われ、本当の天国を見るような気がします。特にPie Jesuのボーイソプラノによるソロがたまりません。本当に昇天しそう。その前曲Sanctusでのヴァイオリンソロは、普通より1オクターヴ高く繊細で実に美しい(バロック・ヴァイオリンの名手サイモン・スタンデイジが弾いています)。
さらに古い1888年版には管楽器すら入っていません。オクスフォード・スコラ・カントルムによる録音を持っていますが、ちょうど中間形のラター盤がバランスよく、私の好みです。
ラター盤のもう一つの魅力は、カップリングのフォーレ声楽曲の美しさです。ぜひ聴いてみて下さい。
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