『人間解放の福祉論 出口王仁三郎と近代日本』 広瀬浩二郎 (解放出版社)

福祉の問題は難しい。いくら21世紀が福祉の時代と言ったところで、実際は福祉が商売になる時代になったというだけで、本当の意味での福祉の実現は、まだまだ先のことになりそうです。
そんな現状やら、偽善に走りがちな教育界での福祉論議やらに、少々いやけがさしていました。では、宗教は何ができるのか。その宗教さえ、福祉を自己満足の手段と履き違え、しまいには商売道具にまでしてしまう有り様。だいたい、宗教の名の下に人殺しをしているようじゃ何も期待できませんよね。
しかし、本来の宗教がめざすもの、つまり今宗教と言われるものを生んだ純粋なる始祖たちの考えは、かぎりなく福祉に近いものだったでしょう。ゴータマしかり、アブラハムしかり、イエスしかり、ムハンマドしかり…。
私は、多くの日本人と同様、ある寺の檀家ではありますが、特定の宗教団体に属しているという感覚はありません。しかし、日本近代が生んだ巨星、出口王仁三郎からは多大な影響と恩恵を授かっています。彼の人間離れしたスケールの言動から得られる智慧は数限りなくあります。だいたいが、既存の宗教の全てを混在させる教義(というか霊界物語の内容)からしてとんでもない。宗派の違いなんてものはもちろん、宗教という人間が作ったつまらぬ概念さえも、いとも簡単に無意味なものにしてしまいます。つまり、人間を様々な「コト」から解放してくれるわけです。その辺の(世界中の)痴話喧嘩のようないざこざが本当にばからしくなりますよ。
その「人間解放」という視点から、王仁三郎の教え、ひいては宗教と福祉との関係を考察したのが、この本です。著者の広瀬さんは、国立民族学博物館の研究員です。ご自身、目が不自由ながら、民俗学の研究や武道の世界で活躍されている方です。この本でも、たいへんユニークな視点から福祉に迫っています。そして、とても丁寧に考察を重ねておられました。
「つよいものがち」「われよし」という近代的社会、近代的人間を否定し、「モノ」的世界の復権を目指す王仁三郎の思想こそ、福祉=愛善世界=みろくの世=地上天国を実現する方法だと実感しました。とらわれちゃいけませんね。いろいろなことに。
「耳で見て目できき鼻でものくうて 口で嗅がねば神は判らず」王仁
Amazon 人間解放の福祉論
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