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2004.12.17

『作家と猫』 文藝別冊 KAWADE夢ムック

b09ph 夏目漱石の例を引くまでもなく、猫と作家というか、猫と文学との関係は、おそらく、おそらくですが、犬とそれとの関係よりも深いような気がします。猫にとっては、ほうっておかれるのが至福ですから、つまり、作家さんの文学というお仕事の妨げにはならないということですか。
 もちろん、原稿の上にドンとか、シッポで運筆のじゃまをするとか、ひどく幸せそうな表情で眠って作家の気を引くとか、そういう妨げはします。でも、それをとがめる作家さんの表情は、まちがいなく緩んでいて、結局それが仕事の緊張を解いてくれたりするものです。
 猫という生きモノは、そういうために生まれてきたのかもしれない。つまり文学のために生まれてきたのかもしれない。このムックを読むと、そんなふうに思われます。犬は生活のために生まれた。猫は文学のために生まれた。
 人間という生きモノは、猫好きと犬好き…両方好きという人もいますが…やはり最終的にはどちらかに分類できそうです。生活か文学か、ということです。私は言うまでもない。
 ただ、この本の中で村松友視さんも言っていますが、本当の猫好きは、実は単なる愛猫家ではなく、たとえば村松さんだったら「アブサン家」なんですよね。猫と思っていない。自分と同格である。あるいは猫の方が上位なんです。神に近いんです。
 そういう人は、文学の神から福音を授かることができる。作家にとって全ての猫は福猫だということです。その最たる例が、漱石とあの黒猫でしょうね。うらやましい。ウチにも黒猫が2匹いますが、どうも福猫になりきっていない。私が書き物をしていても、あんまりじゃまをしてくれない。たぶん、私の方に問題があるのでしょう。どちらかというとカミさんの方がじゃまされます。というか、無理やりじゃまさせてるって感じですな、あれは。
 一つ、この本で嬉しかったのは、先ほどの村松友視さんに加えて、三木卓さんが登場なさっていることです。お二人とも私の出た高校の先輩にあたります。直木賞作家と芥川賞作家の両方が出ている学校というのも珍しいのではないでしょうか。そのお二人がまた無類の猫好き…いえいえ「○○(猫の名前が入ります)家」だったということに、この上ない喜びをおぼえます。私もぜひあやかりたいものです。

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