『男と女の悲しい死体』 上野正彦
『死体は語る』が実に興味深い内容でしたので、次は何を読もうかと考えていましたが、ついついタイトルにつられてコレを手に取ってしまいました。
男と女というテーマには常に死の影がさしています。多くの古典作品を引っ張り出すまでもありません。自殺、殺人、心中…。男と女の存在理由が、生命を生み出すことにあるわけですから、その裏返しである死も黒い輝きを持つのでしょう。なんとなく納得できるような、できないような…。愛と憎しみが表裏一体であるというのと似ているのかもしれませんね。
さて、この本での上野先生は、ちょっと気合いが足りないというか、内容も表現も深みがなく、少しがっかり。まあ、あんまり時間がなかったんでしょう。忙しいようですから。ただ、あんまりこのテーマについて深入りすると、かなりドロドロした雰囲気になってしまうでしょうから、意外にこの程度の入れ込み具合の方が良かったのかもしれません。結局、ワイドショーを見ているような感じで楽しめてしまいました。
昔は恋愛の末の心中が、けっこう美化される傾向がありました。しかし、実際の死体は決して美しいものではない。当たり前ですが、そんなことを実感しました。美しい心のままで死にたい、なんて思っても、残るのは醜い死体だけ。そんなところが「悲しい」のでしょう。
人間を懸命にさせるもの、戦争、宗教、恋愛、金…いまや戦争は身近なものではありません。宗教も形骸化し、恋愛もいまや命を懸けてまでするものではなくなりました。そうすると、残るのは金ですか。女性による保険金殺人が今後も増えていくんですかね。
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