『日本人の神』 大野晋 (新潮文庫)

楽しく読めました。大野さんは本当に根っからのチャレンジャーですね。他の人では尻込みするようなことを平気でやってのけてしまう。そこが魅力であり、欠点であるわけです(失礼)。
日本人の神とは、こりゃまた壮大なテーマです。大野さんは国語学者ですから、これは正直言って専門外。そういうところに異種格闘技戦を挑むところがすごいですね。しかし、自分の経験と技術には絶対の自信を持っていらっしゃるから、それなりの試合になる。御自身のペースの試合に。そこが魅力であり、欠点であるわけです(失礼)。
なんか、アントニオ猪木みたいですね。まあ、カリスマであることは認めましょう。
というわけで、この本もなかなか魅力的な試合内容になっています。さすがに重いテーマですので、かなり計算された試合運びです。まず、神の語源について、例の上代特殊仮名遣いという得意技で機先を制します。しかし、そこからは過去の文献、過去の研究史をなぞるように御自身が謙虚に学んでゆきます。相手のペースに合わせてますね。なかなかの試合巧者。
そして試合後半は、当然必殺技の連続に持っていきます。「タミル語」攻撃です。これでもかこれでもかと神に関する日本語とタミル語を組み合わせていきます。たしかに迫力あるし、ちょっとビビります。
で、しっかり自分の勝利を手中にしたところで、再び相手を思いやるようなそぶりを見せます。う〜ん、素晴らしいレスラーですね。おっと失言。
そして、なんと言っても試合後の勝利者インタビューが最高ですね。曰く、
「神道の専門家、国学院大学の平井直房教授が、内容を一閲して下さった…(中略)ただ、御意見を必ずしも受け入れなかったことは、御寛恕いただきたいと思う」
面目躍如ですな。
Amazon 日本人の神 新潮文庫
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