『猫語の教科書』 ポール・ギャリコ (ちくま文庫)
猫好きたちは、皆、自分が世界で一番猫が好きだと思っているものです。しかし、何事にも上には上がいるもの。私も、かなりの猫好きを自認していましたが、結婚してみてすぐにそれは間違いだったと知りました。今では、自分はそれほど猫が好きではないのではないか、なんて思うようになってしまいました。それほどウチのカミさんは猫を溺愛しているのです。実際、(私はもちろんのこと)子供たちよりも猫の方がかわいい、なんて言い出す始末ですから。ちなみにウチには黒猫が2匹います。
これは、猫の立場から書かれた、いかにして人間を手玉に取るかという内容の教科書です。猫の言葉で人間を描くという意味では、漱石の処女作と同じ発想なのですが、こちらはよりリアルですね。猫自身がタイプライターを打って書いたという設定も面白い。
漱石の時もそうでしたが、こうして猫ごときに揶揄される人間の一人として、読後いいもしれぬ怒りに、いえいえ喜びにうち震えてしまいます。全ては猫の意志のまま私たちが操られている…うすうす感づいていたことですけれど、やっぱりね、でもいいんだ。プロレスの本質を知って、ますます愛情が深まるというのと同じですね。
筆者であるネコちゃんが繰り返し書いている「人間は擬人法で猫を見ている」という言葉、人間という種のエゴイスティックな性格を見事表現しています。その点も納得してしまいました。
ところで、この筆者、いやいや、猫語の翻訳者は、あの「ポセイドン・アドベンチャー」の原作者なんですね。知りませんでした。
Amazon 猫語の教科書ちくま文庫
| 固定リンク
「ペット」カテゴリの記事
- 『猫は逃げた』 城定秀夫脚本・今泉力哉監督作品(2023.08.14)
- 『江戸にゃんこ 浮世絵ネコづくし』 太田記念美術館(2023.05.18)
- 臨時特別号「日刊ニャンダイ2023」(2023.02.22)
- 『トラさん~僕が猫になったワケ~』 筧昌也監督作品(2022.03.18)
- Wansview ネットワークカメラ(2021.10.03)
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 南部と津軽と甲州と…(2024.07.31)
- 死なない力(2024.07.18)
- 『今永昇太のピッチングバイブル』 (ベースボール・マガジン社)(2024.07.17)
- ハイデガーVS道元…哲学と仏教の交差するところに、はじめて立ち現れてきた「真理」とは?(2024.06.03)
- 日本語はどこから来た?(2024.06.01)
コメント